伝統野菜などの珍しい品種や、見たことのないほど大きく育ったほうれん草、味が濃い人参……。個性的な野菜たちを、化学肥料や農薬を使わず、じっくり育てている柿右衛門農園。「個性が強い野菜で食卓が明るくなれば」と話す園主の柿田さんに、野菜づくりへの思いを伺いました。
湘南台駅から、ゆるりとした上り坂を走るバスに揺られていると、車窓から見える景色がだんだんと緑豊かなものへと変わっていきます。
ここは藤沢市の打戻(うちもどり)と呼ばれる地域。地元の人が集まるという宇都母知(うつもち)神社からは、何にも遮られない富士山を望むことができます。
そんな打戻で14枚(2ヘクタール)もの畑をひとりで耕しているのが、柿右衛門農園の柿田祥誉(かきたよしたか)さん。
2014年に開園した柿右衛門農園は、来年で10周年を迎えます。
柿田さんに農園名の由来を尋ねると、「学生時代のあだ名が『柿えもん』だったんです」と笑って教えてくださいました。
「なんだか由緒正しい農園みたいでしょ(笑)」と笑う悦子さん。
柿田さんは、もともとは都内の研修企画会社に勤めていたそう。
就農のきっかけになったのは、三浦市の有機農家に訪れた際に
「白菜の菜花」や「摘果メロン(※1)」を食べて、衝撃を受けたこと。
「白菜といえば、スーパーに並んでいる形のものしか知らなかった」という柿田さん。ひと口に白菜と言ってもいろいろな形があり、間引きされた野菜や、一般に流通されない野菜もおいしいのだと知るきっかけになったのだそう。
(※1)メロン栽培の過程で間引きした、こぶし大くらいのサイズの果実。瓜のような味で、サラダや、浅漬けなどにして食べるとおいしい。
そんな柿田さん自身の体験もあり、柿右衛門農園では「スーパーでは買えない味」を楽しんでもらえるような野菜づくりを心がけています。
「うちの野菜は、在来種などの珍しい品種を栽培していたり、品種は普通でも味の濃いお野菜だったり、個性豊かな子たちばかりなんです」と語る柿田さん。
「『これって九州の伝統野菜なんだって』『これ、小松菜の菜の花なんだって。珍しいね』『この人参、味が濃いね』とか。食卓の会話がちょっと弾んだり、ちょっとほっこりできるお野菜をつくりたいなと思っていますね」
当日の朝に収穫して、その日のうちに消費者に届けるので、鮮度は抜群。土付きで出荷しているので、その分日持ちもするのもありがたいところ。
キッチンで泥を落とすと顔を表すのは、姿形も個性的な野菜たち。それぞれに表情があるのが愛らしく、じっくり手触りを確かめるように料理をしたくなります。
葉っぱまで生き生きとした大根
取材時の3月中旬に旬を迎えていたのは、ほうれん草、かき菜などの葉物。スーパーでは見たことがないほど大きく育っているのに茎まで柔らかく、おひたしやお味噌汁にしてもよし、炒め物にしてシャキシャキ食感を楽しむのもよし。
これからの時期に収穫されるズッキーニは、輪切りにしてステーキに。味が濃いので、シンプルに塩胡椒を振るだけでもおいしいそうです。
そんな柿右衛門農園の野菜は、藤沢や鎌倉エリアの販売店やレストランからも注文がくるそう。「KAMOSU」「KISSAKO labo&pantry」「Organic Garden 茅ヶ崎」などのお店で、野菜を購入することができます。
そのままでは出荷できない野菜は、加工品などにして捨てることなく活用しています
また、「農家と食卓の距離をもっと近くしたい」との思いから、柿右衛門農園では農園内の直売所をほぼ毎日オープンしたり、さらには自らイベントも主催したりしているそう。
お味噌づくりや、お米づくりを体験できる「田んぼ塾」や、人気飲食店の店主などを講師に迎えて行う、野菜をふんだんに使った料理教室などのイベントは毎回人気で、県外からの参加者も訪れるとのこと。
直売所やマルシェで販売する野菜には、品種の説明や、どんな料理に合うかが書かれたシールが貼られています
個性的でおいしい野菜に感動したら、ぜひ柿右衛門農園の公式LINEで感想を送ってみてください。
農家さんとのやり取りも含めて、スーパーでは経験することのできない食の楽しさを知ることができます。
ご注文はこちらから→ 柿右衛門農園 – ハックツ!
【プロフィール】
柿田祥誉さん
都内の研修企画会社を経て、2014年に就農。「農家と食卓の距離感を近くしたい」との思いから開園し、藤沢周辺の方々の元へ野菜を届けています。宇都母知神社で毎年行われる収穫祭でも野菜を出品しています。